三浦半島唯一学問の神 久里浜天神社
三浦半島唯一学問の神 久里浜天神社
  • 天神様菅原道真公のお話
  • 初宮詣
  • 七五三
  • 合格祈願
  • 病気平癒
  • 厄払い・方険八方除け
  • 安産
  • 交通安全
  • 出張祭典
ホーム  >  天神様菅原道真公のお話  >  その⑤文武を磨く【前篇】
天神様菅原道真公のお話
第十話
その⑤文武を磨く【前篇】


平安京の中というのに、ここはまた何という静けさでしょう。庭の紅梅に、時折うぐいすが飛んで来るほかは、音一つしません。梅はまだ固いつぼみです。

叡山から吹きおろす風の寒かった昨日にひきかえ、今日は全くうららかな早春の日和。もうお昼近くになりますが、朝からの静けさからみれば、誰もいないのでしょうか。この静けさの中に、かすかな衣ずれの音が聞こえてきました。縁側のほうに、誰か出て来る様子です。

縁側にあらわれたのは、年の頃十八、九の青年でした。ふし目がちに歩いているから、よくはわかりませんが、切れ目の長い眼、高い鼻、いかにも上品で、よい家の生まれと思われます。

青年は眼を上げて、澄みきった空を眺めました。強い日の光がまぶしいのでしょう。二三度まばたきをしました。勉強に疲れたらしい眼には日の光が、ことさまぶしく感ぜられたのでしょう。

青年の目は庭の紅梅にうつりました。やさしい眼で、梅の木をなでまわすようです。唇にはかすかな笑みをたたえ、いかにも梅が好きでたまらぬ様子です。しばらく梅を眺めて後、青年は縁側を東にまわりました。東側の庭には、ひとむらの竹が、さびしく冬を越しています。青年はまたこの竹が好きでした。

朝日のさし入るときは、その影を障子におとし、風のある日は、サヤサヤと葉ずれの音が聞こえます。竹と梅とは、この青年にとっての、忘れられぬ友達です。

この青年は、ほかならぬ、文章生菅原道眞です。

道眞は、縁側に立ちつづけたまま、誰にいうともなく、小声で語りました。

「ありがたいことだ。こんなよい (やしき) で、毎日好きな書物が読めるとは。ここにいると、全く気がのびのびするし、心は落ちつく。けさも朝の食事がすむと、すぐ勉強にとりかかったが、いつか知らぬ間にお昼近くになってしまった。こんなよいやしきはまたとあるまい。死ぬまでもここにいたいものだ。・・・・・そうだ、いつか父上にそのことをお願いしてみよう。」

道眞は、もう一度庭を見まわしてから、静かに後を向き、またもとの部屋へ入っていきました。さきほどの勉強をつづけるのでしょう。

このやしきを、世間では 紅梅殿(こうばいでん) といいました。庭に、紅梅の木があるからです。道眞が、この紅梅殿に住むようになったのは、文章生になって間もなくで、このやしきは、それまでは誰が住むというでもなく、菅原氏の一族の子供達が集って、一緒に学問したり、泊まったりするのに使うだけでした。

そこを道眞の勉強の場所と定め、ここに住むようにと、父に命ぜられたのです

学問好きで、静かなたちの道眞は、ここがすっかり気に入りました。道眞の学問は日一日と深くなっていきます。

続きを読む


菅原道眞公のお話 目次
第一話 其の①男子生まれる【前編】(10/2) 第二話 其の①男子生まれる【後編】(10/3)
第三話 其の②学者の家【前編】(10/4) 第四話 其の②学者の家【中編】(10/5)
第五話 其の②学者の家【後編】(10/6) 第六話 其の③双葉芳し【前編】(10/7)
第七話 其の③双葉芳し【後編】(10/9) 第八話 其の④月の桂【前編】(10/11)
第九話 其の④月の桂【後編】(10/13) 第十話 其の⑤文武を磨く【前編】(10/15)
第十一話 其の⑤文武を磨く【後編】(10/17) 第十二話 其の⑥官途につく【前編】(10/21)
第十三話 其の⑥官途につく【中編】(10/24) 第十四話 其の⑥官途につく【後篇】(10/28)
第十五話 其の⑦母をうしなう【前編】(10/30) 第十六話 其の⑦母をうしなう【後篇】(11/1)
第十七話 其の⑧文章博士【前編】(11/3) 第十八話 其の⑧文章博士【後篇】(11/6)
第十九話 其の⑨白氏に同じ【前篇】(11/8) 第二十話 其の⑨白氏に同じ【後篇】(11/10)
第二十一話 其の⑩讃岐に赴く【前編】(11/12) 第二十二話 其の⑩讃岐に赴く【後篇】(11/15)
第二十三話 其の⑪阿衡の儀【前編】(11/17) 第二十四話 其の⑪阿衡の儀【中編】(11/19)
第二十五話 其の⑪阿衡の儀【後編】(11/21) 第二十六話 其の⑫春立ちかえる【前編】(11/23)
第二十七話 其の⑫春立ちかえる【後篇】(11/25) 第二十八話 其の⑬歴史家道眞【前編】(11/27)
第二十九話 其の⑬歴史家道眞【中編】(11/30) 第三十話  其の⑬歴史家道眞【後編】(12/2)
第三十一話 其の⑭遣唐使を停む【前編】(12/4) 第三十二話 其の⑭遣唐使を停む【中編】(12/7)
第三十三話 其の⑭遣唐使を停む【後編】(12/13) 第三十四話 其の⑮知命の賀【前編】(12/15)
第三十五話 其の⑮知命の賀【後編】(12/18) 第三十六話 其の⑯天皇の師伝【前編】(12/21)
第三十七話 其の⑯天皇の師伝【後編】(12/26) 第三十八話 其の⑰大和への旅路【前編】(H.17/1/24)
第三十九話 其の⑰大和への旅路【後編】(1/24) 第四十話 其の⑱右大臣に昇る【前編】(1/29)
第四十一話其の⑱右大臣に昇る【後編】(2/9) 第四十二話其の⑲御衣を賜わる【前編】(2/14)
第四十三話其の⑲御衣を賜わる【後編】(4/15) 第四十四話其の⑳禍きたる【前編】(4/20)
第四十五話其の⑳禍きたる【後編】(4/21) 第四十六話其の21 流れゆく身【前編】(4/23)
第四十七話其の21流れゆく身【後編】(4/25) 第四十八話其の22明石の驛【前編】(5/4)
第四十九話其の23明石の驛【後編】(5/10) 第五十話其の24筑紫への道(7/5)

ページトップ
ホーム  >  その⑤文武を磨く【前篇】